1.治療の全体像
1回の治療は正味40分くらいです。(初回は頭部の位置を決めるのにに30分-1時間かかります)
治療は、1日1回行います。
回数は治療効果によって変わってきます。まず、15回行います。基本的には月-金に行いますので、3週間かかります。開始前と15回終了時にハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)による評価を行います。一定の効果が認められれば、さらに15回行います.(ものすごく効果が出ていれば、後半は6回程度までに減数します.逆に全く効果がなければ、治療は打ち切りになります)
ですので、30回行った場合、6週間かかることになります。(祝日などで治療期間が延びることがあります。最大8週間です)
2.治療の流れ
rTMS治療のコツは、磁気刺激を左背外側前頭前野に正しく当てることです。そのため、使用機器のニューロスターでは、初回に、左背外側前頭前野を特定するためのセッティングを丁寧にします。これに1時間近くかかります.各数値は記録されますので、2回目以降はすぐ治療(セッション)になります。
(1)まず、機械に対して頭を置く位置を立体的に測定し記録します.その時に症状・内服・睡眠などに変わったことがないか確認します。頭の正中ラインをわかりやすくするため、おでこの真ん中に測定用の紙テープを貼ります。
(2)次に、一次運動野の位置を測定します。なんで運動野なの?思うかもしれませんね。左背外側前頭前野が最終目的地なのですが、その領域を磁気刺激しても(頭皮に輪ゴムでバチンとされたような痛みは感じますが)外見上何も変わりませんので、直接場所を特定することはできません。一方、この一次運動野は、磁気刺激をすると反射的に指が動き、また、細かな場所の違いで、動きの大きさや指の種類が異なる(例えば、小指が動いたところから少し下げると人差し指が動くとか)ので、厳密に評価できます。そして、解剖学的に、左背外側前頭前野は一次運動野の5.5cm前方にあることがわかっています。つまり、一次運動野を特定できれば、左背外側前頭前野も特定したことになるのです。
(3) 同じく一次運動野を使って、磁気パルスの至適強度を決定します。
(4)いよいよ治療です。1回の治療のことをセッションと呼びます。 2回目以降・1回目でも先にセッティングだけしてしまった場合、すぐにセッション開始です。4秒刺激(その間,10回のパルス刺激があります)・26秒休憩(刺激強度が高い場合,40秒程度まで延ばすことがあります)が75回繰り返されます。通常、40分ほどで終了します。患者さんの訴えとしてよくあるのが、磁波が当たる瞬間の頭皮の痛みです。輪ゴムでバチンとされるような痛みですが、治療終了後、長く続くようなものではなく、大体の方が1週間ほどしていると慣れてきます。